2006年08月02日

墨染めについて

小倉百人一首に、
「おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖」
という歌があります。慈円という比叡山のお坊さんの作で、浮世の民衆を仏法の力で救おうという決意を詠んだ歌だそう。ここで詠まれ江いる「墨染」は「墨色」の中でも、特に濃い黒だったと考えられています。

また、源氏物語の中でも、濃い鼠色を表す「鈍色=にびいろ」とともに、「墨染」についての記述が多く見られることから、平安時代には、一般的に使われていた色だと思われます。

古今和歌集には、
あしひきの 山辺に今は 墨染めの 衣の袖は ひる時もなし 読人知らず
など、墨染めが出てくる歌が複数見られます。

ちなみに、日本における墨の歴史は古く、邪馬台国の時代の土器からも、墨で模様を描いたと思われる痕跡が見つかっています。

正倉院の頃には、中国、朝鮮から今の墨に近い墨が伝わり、奈良時代には、仏教の広がりとともにその需要が増え、国内でも生産されるようになりました。

水墨画の世界では「墨の五彩あり」という表現があるそうで、墨の色を「清」、「淡」、「重」、「濃」、「焦」の5段階に分けています。日本の伝統色の「墨色」にもも薄い灰色から漆黒まで、幅広い色相を持っています。

墨は基本的には、煤と膠を混ぜて作られますが、松材を燃やして取った煤を使う「松煙墨」と、菜種や胡麻などの油を燃やして取った煤を使う「油煙墨」に大別されます。そのどちらも染料というよりは顔料で、そのままでは、なかなか布に染まりつきません。
そのため、古来の「墨染」の色も、椎や榛の木、樫などの鼠色を染める雑木の鉄媒染で染め重ねられていたと考えられています。

墨を使って染める場合は、接着剤代わりに、豆汁や糊などを加えて、墨を布に定着させます。
posted by わびすけです at 12:21| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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